経済産業省 示した原子力発電所の新たな2つの運用方針とは
【概要】
11月8日に経済産業省は、原子力発電所(以下「原発」という。)を長期運転するための新たな2つの運用方針を示しました。
現行方針も含めて、原子力規制委員会の審議会で議論をし、年末までをめどに決定したいとしています。
【政府の目的】
政府は、電力の安定供給、脱炭素化への貢献のため、原発の最大限の活用を掲げています。
【現行方針】
現行は、運転期間を原則40年、最長60年とする方針です。
【新案】
案1 運転期間の上限を撤廃する案。
案2 最長60年を維持しつつ、運転を停止した期間を除外し、その分を追加的に延
長できるようにする案。
【規制委員の意見】
・安全確認を前提に、案1を支持する意見が多数あり。
・それに対して、案2や現行維持を支持する意見あり。
【意見がわかれる理由】
(1) 政策判断のため
そもそも、運転期間の上限は、福島第一原発の事故の経験を踏まえて政府が、原則40年と決めた経緯があります。
そのため、運転期間の上限について規制委員長は、「技術的な観点ではなく利用政策」として判断するものとしています。
(2) 施設で状況が異なるため
電力会社は、原発は停止している間、原子炉などの重要な設備の劣化が進まないという主張をしています。
しかし、規制委員会は、劣化が進む機器や設備もあり、個別の施設ごとに状況は異なるとして、科学的、技術的に結論を得るのは困難とのことです。
【市民からの反対】
脱原発を訴える全国の市民グループなどが、最長60年と定められている原発の運転期間の上限をなくすことについては、反対しています。
【専門家の論評】
(1) 手続き不足
まず、現行の40年の制限は、福島の事故を踏まえて政府が決めたものだ。
しかし、制限を変える根拠を明確にする手続きを踏んでいないように思われる。
(2) 延長より新しい炉への転換
原子力発電を続けていくのなら、危険性の最小化が必要だ。
新しい炉のほうが古い炉よりも危険性が小さいのだから、第一義的に追求すべきは新しい炉への転換のはずである。
延長することが目的となっている印象を受ける。
(3) 地域への説明不足
そもそも、原発延長等を推進するなら、原発立地地域に行って説明することから始めるべきではないだろうか。