来年の為替相場についての専門家25人の予測と日本の対策
1 要旨
歴史的な円安が止まりません。
今年の初め1ドル=115円台だった円相場が、10月21日には1ドル=151円90銭にな
りました。
今後円安はどこまで進むのか。日本はどうすればいいのか。
第一線のエコノミストや経済学の研究者、元日銀幹部など25人の専門家に聞きまし
た。
2 円安の理由
円安の理由は、日米の金利差です。
アメリカは、インフレを抑え込もうと、大幅な利上げを継続しています。
それに対して、日本は利上げを行っていません。
そのため、日米の金利差が急速に拡大し、それに合わせて円安が進行しています。
3 予測
25人の専門家に来年・2023年末に予測される米ドル/円為替レートの水準を聞いた
ところ19人から回答がありました。回答は以下のとおりです。
▽1ドル「130円台」が13人。
▽1ドル「120円台」が4人。
▽1ドル「140円台」が1人。
▽1ドル「150円台」が1人。
4 予測がばらつく理由
予測にばらつきがあるのは、アメリカの金融政策動向が不透明なためです。
専門家によって、アメリカの利上げスピードなどの意見が異なり、それが予測に影
響しています。
5 円安の本質的な背景
ばらつきはあるものの、全ての専門家が円安傾向が継続すると回答しています。
ある専門家は、「円安の本質的な背景には、日本の構造的な問題がある」と指摘し
ました。
6 構造的問題
(1) 円安のメリットの低下
リーマンショック以降、多くの日本企業は海外での生産を増やしました。
その結果、日本で生産して輸出するという流れが崩れてしまい、円安による輸
出メリットを享受できなくなりました。
(2) 円の魅力が低下
日本には、デジタル時代に適応できる企業が少なく、人口減少・高齢化が顕
著です。
そのため、海外から日本経済が魅力的に見えず、円の魅力が低下していま
す。
7 日本が取り組むべきこと
(1) 賃上げ
多くの専門家があげたのが「賃上げ」です。
物価の上昇を上回る賃上げを実現し、経済の好循環をつくることが重要で
す。
(2) 新しい輸出
従来輸出していなかったものが、円安をきっかけに輸出を増やすことができ
るかもしれません。
例えば、農産品がその候補の1つです。ここまで円安が進行すれば、日本の
農産品も海外において価格競争力が強まってきます。